倚りかからず

茨木のり子さんの詩集から

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  倚(よ)りかからず 

 もはや
 できあいの思想には倚りかかりたくない
 もはや
 できあいの宗教には倚りかかりたくない
 もはや
 できあいの学問には倚りかかりたくない
 もはや
 いかなる権威にも倚りかかりたくはない
 ながく生きて
 心底学んだのはそれぐらい
 じぶんの耳目
 じぶんの二本足のみで立っていて
 なに不都合のことやある
 倚りかかるとすれば
 それは
 椅子の背もたれだけ

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詩もいいね(^^)

もう一つ

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  ある一行

 一九五〇年代
 しきりに耳にし 目にし 身に染みた ある一行

 <絶望の虚妄なること まさに希望に相同じい>

 魯迅が引用して有名になった
 ハンガリーの詩人の一行

 絶望といい希望といってもたかが知れている
 うつろなることでは二つとも同じ
 そんなものに足をとられず
 淡々と生きて行け!
 というふうに受けとって暗記したのだった

 同じ訳者によって
 <絶望は虚妄だ 希望がそうであるように!>

 というわかりやすいのもある
 今この深い言葉が一番必要なときに
 誰も口の端にのせないし
 思い出しもしない

 私はときどき呟いてみる
 むかし暗記した古風な訳のほうで

 <絶望の虚妄なること まさに希望に相同じい>
 
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それと、もう一冊

こちらからは

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  自分の感受性くらい

 ぱさぱさに乾いてゆく心を
 ひとのせいにはするな
 みずから水やりを怠っておいて

 気難しくなってきたのを
 友人のせいにはするな
 しなやかさを失ったのはどちらなのか

 苛立つのを
 近親のせいにはするな
 なにもかも下手だったのはわたくし

 初心消えかかるのを
 暮らしのせいにはするな
 そもそもが ひよわな志にすぎなかった

 駄目なことの一切を
 時代のせいにはするな
 わずかに光る尊厳の放棄

 自分の感受性くらい
 自分で守れ
 ばかものよ

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うん、そうだね!自分で守る!

illust431

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